20代前半。
ある繁華街のガールズバーで働いていた時のこと。
まだ新店で、飲み屋と風俗店を経営していた若手社長に会いに知り合いがお祝いがてらよく飲みに来ていて賑わっていた。
ある時、比較的まだ空いている早い時間に社長の友人だというヤクザの組長さんが来店して来た。
そして2度目来た時に、出勤していた女の子約5人前後をカウンターの中一列に並べて何やら品定めをしてきた。
声は完全に酒灼けのようにかすれ、陣内孝則を少し太らせた風貌にガタイの大きい組長にみんなが緊張していた。
怖すぎて選ばれたく無いと。
そして選ばれてしまった私。
その時はなんとも思わなかったというか、世間知らずの私にはまだ何が何だかよく分かっていなかった。
選ばれた理由は“目”だった。
昔から目だけは褒められる。
高校生の時に、電車を待っているホームで知らないおじさんにも突然「君はいい目をしているね」なんて言われたこともあったり、銀座のホステス時代にも接客担当していたわけでも無いのに、たまたま後ろを通った時にある航空会社の社長さんにいきなり「君はいい目してるね」と言われたこともあった。
決して大きいわけではないけど、なぜか目だけは褒められる。
知らない人にいきなり声掛けられて言われるって、よほど私の目から何かを発しているのか?
いつも謎に思う。
そして組長が私を選んだ理由も目だった。
名刺も頂き、初めて見た組長の名刺とか・・・(怖えぇ)
そこから何度かお店に来ては、自分はこんな人間だけど良かったらデートしてくれないかと言って来た。
刑務所に入っていた話や、デートした相手とSEXしようとしたらちんこがあったという話とか、そして拒まずにお尻の穴を使ったというエピソード。
好きになった人がたまたま男だっただけなんだと、こんな俺だけどと何度も言うなんかまっすぐで正直な姿に感動した。
他にも落とし前をつけた話や日本刀がどうのとか、グロいエグい話をわざとして来た。
多分今思うと、付いてこられる女かどうか試していたのではないかと思う。
それでもいつかもしかしたら姐さんと呼ばれる日を想像するとデートの踏ん切りがつかなかった。
あまりにも悩み、母に組長がデートに誘って来ているんだけどどうしたらいいかわからないと相談した時に、「下っ端のチンピラだったら反対するけれど、どんな立場の人間でもトップになった人ならいいじゃない、賛成するわ」と。
妙に納得。
常に1番を目指す母の母らしい回答。
その言葉に背中を押され、デートをしてみることに。
嬉しそうにはしゃぐ組長。
嘘じゃ無いよね?と何度もしつこく聞くものだから、嘘じゃ無いですよなんなら指切りげんまんでもしましょうかと何も考えずに言ってみたら、差し出された小指が両手とも無くて気まずい雰囲気になった。
薬指で指切りげんまん。
そしていざデート。
デートというか、30代半ばの組長は、多分嫁さん候補を探していたのだと思う。
ボーリングのデートになぜか知らないおっさんと3人。
組長クラスになるとやっぱりお付きの人がいるのねーと驚いた。
そしてボウリング開始。
普段やり慣れていなかった私は、レーンに向かって投げたはずの玉が間違えて真後ろに飛んで行ってしまった。
ドンッとものすごい音。
座って見ていた組長と付き人が自分たちの方に玉が飛んできたものだからびっくり。
下手くそすぎて自分もびっくりした。
そしてまだ1ゲームも終わっていないのに、何故か急用ができたとそそくさと解散してさようなら。
2度と会うことはなかった。
組長、私じゃないと気づいた早い決断。
誘うときはガツガツ、去るときはアッサリそそくさ。
なんとまぁ行動の早い肉食系男子。
1時間もしないで途中で帰るとかどんだけ嫁さん探しに焦ってるんだよ。
ボウリングが下手すぎたか?
いや、多分そこじゃないわな。
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