合い間合い間に読んでいたら、発売から2ヶ月以上過ぎてしまった・・・。
それにしても読み応えが半端ない。
本も頂いたが大きくて分厚くて持ち歩きに困り、Amazonで電子書籍版を購入して読んだ。
持ち歩いて読みたい方は電子書籍版をオススメするが、ざっとiPhoneで読むと6000ページ近くなるので、閑散期の待機中とか、かなりもつと思う。笑
漫画家の倉田真由美さんが書いてくださった曼荼羅。
可愛く描いてくださってありがたや〜。(似てないってよく言われるけど笑)
座談会のページの文章を読んでいると、なんとまぁ勝気で強気な気の強い女なんだろうと思ったけれど、絵にそれが現れているように思えた。
実際は気の弱い内弁慶なおばさんなんだけどね。(と自分では思っている)
「私のセックスは誰のものか 」印象的だった言葉がたくさん出てきたうちの一つ。
偏見やそれぞれの考えを持つのは自由だけれど、自分の中のセックスワークに対する嫌悪を人にまで押し付けるなと思う。
なぜ社会的信用がないのかだったり、売買春がなぜダメなのか、職業は風俗嬢ですとなぜ普通に言えないのか、みんながこの仕事をしている上で感じたことがある偏見のなぜ?がこの本には詰まっていた。
宗教の話にまで発展したり、売り専ボーイやニューハーフヘルス嬢の話もあったりと盛りだくさん。
風俗の偏見にぶつかり、なぜ?と思ったことがある風俗嬢や風俗で遊んでいる男性にも是非是非読んでいただきたい一冊。
読み応えはあるが、きっと風俗嬢は自分の言いたいことを中村うさぎさんが代弁してくれていると感じれて読んでいてスッキリも感じれると思う。
あまりにも膨大な量だったので、私は自分の備忘録の為に、各対談者ごとの感想をまとめておく。
●中塩智恵子さん
世間の価値観は男性目線でできていて、被害者であろうと犯人であろうと事件の本質は無視され、セックスワーカーであるところに注目される。
風俗嬢がニュースになるって、そんなにまだまだ珍しい事なのか?
昼間の世界から離脱して風俗の世界に飛び込んだ自分も確かに見えない恐怖の厚い壁があり、それを覚悟の上でぶち壊して入った。
昼職兼風俗業の人はどちらの世界も器用に渡り歩いててただただすごいなと思う。
風俗嬢だからと卑下されたり好奇の目に晒される感は、働いた人や身近で関わった人にしか分からないのか、意外となんて事ない世界なのに。
みんな同じ人間なのにね。
中塩さん著の風俗嬢という生き方の本の時にも思ったのだけど、16年分の風俗嬢の声をまとめられている中塩さんの取材資料は、時代の移り変わり社会の変化が風俗にもはっきり現れていて、とても貴重な資料で興味深いものだと思う。
“風俗客の風俗嬢を蔑んで自分のプライドを保ちたい人って結構多い。その逆に、「見下し感 」の反転で「大変だね 、頑張って 」と言われることに違和感を持つ人も。”
私もどちらも経験したからすごく分かる。
もうね、遊ぶ立場の男性は風俗嬢に余計な事は言わないに限るのよ。
綺麗に遊んでサクッと帰る。
その風俗嬢を気に入ったらまた次もサクッと買った時間を楽しんで帰ること。
激しく同意してしまったわ。
そして最後の“性教育とテンガ風コンドーム”トークの盛り上がり、笑えた。
●神田つばきさん
この仕事をしている事に引け目や負い目、劣等感を感じている人には是非読んでほしいと感じた。
胸を張って誇りを持ってとまでは言わないけれど、お客さんを癒すサービス業をしている、仕事をしているという自信を持ってほしい。
●畑野とまとさん
ノンケの男性がペニスを持った女性に舐めてもいいかと聞く姿、舐めたくなったら見た目が女性なら性器の形なんて関係なくなるらしい。
好奇心なのか?衝動的なものなのか?未知の世界で読んでいてとても驚いた。
●坂爪真吾さん
ほんといつも思うんだけれど、デリヘルがなくなればいいのにって。
性感マッサージかソープなどの店舗型だけで合法化されたらいいのではと思ってしまった。
何かを大きく変えるということは、必ず良い面だけでなく悪い面も何かしら出てくるけれど、ソープもヘルスもどちらも生き残りをかけた価格競争が激しく、すでにデリヘルよりも安いソープもあるわけで、わざわざホテル代を払ってまで高く本番ができないヘルスに行く意味がわからない。
本番をするならソープ、ラブホ代払ってまでヘルスに来て本番強要するリスクの高いデリヘルは全部無くしてしまえばいいのに。
その他の性癖を持った人たち向けにSMやデブ専なども専門のソープでまかなって行ったら良いのではとつくづく思う。
そうすれば駅前のラブホ街も半減して、立地のいいマンションなどを増やしたら、鶯谷の駅前なんかももっと明るく感じると思うんだけどな。
変に住宅街と共存している感じが、景観や教育的にどうかとなるならば、吉原や飛田新地など全国にある遊郭エリアをきちんと残して陸の孤島化みたいに大人の遊び場エリアと分けたらいいのになんて完全に私の理想論だな・・・。
社会を離脱した人間の唯一の居場所であったり救いの場だったりする人もいる。
これは男性も女性も同じ。
風俗嬢と風俗で働く男性スタッフも似たりする。
昼職からの離脱には男性の方が世間は厳しい。
前職セキュリティー会社のガードマンをしていた男性はボーイの仕事をたしか2週間と持たなかったし、色んなソープのボーイを転々としていたおじさんもあまりにも仕事ができなくて、配属先を異動になったとたん、朝6時開店が起きられないと辞めていった。
男性スタッフも店を選べば時間も比較的自由、嫌なら店を転々とする、だから緩くだらしなく見えてしまい、ラクして稼げていいねなんて言われるのかもしれない。
●開沼博さん
“他者の経験や感覚を理解しようとせずに 、ひたすら自分が正しい側なんだ 、自分がモラルの側にいるんだということを掲げながら異論を唱えるものにマウンティングして 、他の言葉を全部潰していく ”
激しく同意。
本当にその通りだと思う。
特にSNSやネット、掲示板に言える。
若い時は世界が狭すぎて、自分の考えは間違っていないと思ってしまいがちになり、加齢と共に今度は自分は色々な経験をして知識もあるから正しい事は分かるなんて思ってしまいがち。
あぁ自分も気を付けなくては。
何が正しいとか間違っているかとかではなく、相手の考え方にも耳を傾けてそういう考え方もあるんだなと、それが例え自分には受け入れがたい内容であっても考えは尊重したい。
自分はこう思うと意見として言えばいいものをなぜか他の言葉を潰そうとしてくる。
そんな人にはなりたくないな。
●伏見憲明さん
この方との会話でうさぎさんが言った『私は店舗型を容認して欲しいと思う。』はもう激しく同意。
さらにうさぎさんのうんこ論がなんかすごい好き。
そんな風に分けられたら理想だな。
売買春に反対するフェミニズムの人たちとの対談が本当に聞けなくて残念だった。
伏見さんとの対談とうさぎさんの感想を読んで、あんなに名指しではっきり物言う姿勢、あぁ残念、読みたかった。
うさぎさんもおっしゃっていた通り、売春に対する言語化できない嫌悪があるから逃げたのだと思う。
漠然とした嫌悪、説明できない嫌悪、いっそのこと風俗店に体験入店でもしてみたらいんだわ。
そしてうさぎさんの問い。
『自分の世界観をぶち破られる快楽ってのもあると思うんだけど 、みんなそんなに嫌ですか?』
私的に感じたのはうさぎさんは強い人なんだなと。
もちろん新たな世界観を見せてもらえるのならどんどん破られたほうがいいことでもあるけれど、それって結構勇気のいることでもあると思うんだな。
それを快楽と言えてしまうなんて凄いなカッコイイ。
●佐藤優さん
反対だから反対。
神が許していないから。
何ともシンプルで潔い理由に否定も肯定もしないけれど、そういう考えもあるなと妙に頷けた。
反対派と賛成派の人が議論したとして、神が反対理由となってしまっては議論の余地すらない気もする。
それでも北原さんとの対談は見れなくて本当に残念だった。
真逆の意見を持つもの同士の会話はとても興味深いのに。
デリヘルについての話も共感しかない。
店舗型の風俗店が新しく出せなくなり、安易出せる無店舗型のデリヘルなどがどんどん増えてしまった事によって、価格崩壊と風俗嬢の安全を確保できなくなってしまった。
治安維持とクリーンなイメージにしたかったのか、でもそれは臭いものに蓋をしただけ。
見て見ぬ振り。
ここでもまた私の勝手な理想論を。
セックスワーカーを職業として認めてもらう事はとても難しいことと思うので、せめて本番強要や円盤などのグレーゾーンになりやすい無店舗型風俗店ヘルスの廃止、デリバリーサービスは料金はデリヘル価格のままで、服を着たままサービスをするマッサージ的なものだけにして、店舗型の風俗店を遊郭や新地のように陸の孤島のような僻地に男のテーマパークとしてひっそりと村を存続させたら良いのにと思う。
そこでは一流のプロのサービスが受けられるから激安店は全て廃止。
高級店、中級店、大衆店ごとに料金は一律で、価格競争はなし。
そうすれば風俗を不快に思う層の見たくない人には目にも触れにくくなるだろうし、無駄に多い駅近繁華街のラブホテルも半分くらいにして、より駅近くにマンションを建てられたり、都内の不足しているビジネスホテルを建設したりできるのでは。
特に狭くて古いラブホテルだらけの鶯谷の駅前なんてもっと明るくクリーンなイメージになるんじゃないかと。
ヘルスなんて、挿入NGとか外国人もほんとびっくり。
微妙な位置付けの変なサービスだなとつくづく思う。
確かに自分も初めはそうだった、挿入に抵抗がある人がヘルスを選ぶんだと思うけど、入れられたくないなら服着たままサービスした方がまだ安全かと。
なーんて不可能な妄想してしまった。
沖縄の風俗が特殊になっていて、1972年まで売春防止法が適用されていなかったというのは知らなかった。
自分は東京在住の風俗嬢なので、知っていたからどうだ、知らなかったから自分の生活に何か影響があるのかという事はないけれど。
でも反対論の自分にはない考えを読むことで、色んな知らないこともなるほどと勉強になる方だった。
それぞれの方々と中村うさぎさんの対談は本当に読み応えたっぷりだった。
ここまで盛りだくさんなのに、反対派の対談が1人とは残念。
もっと反対派の方々の意見を聞いてみたかった。
まぁ反対派の意見を聞いたところで、風俗嬢である私の意見は変わるわけではないけれど。
逆にこういった議論に、興味を持つきっかけにはなった。
以前行った性のミュージアムにあった、売春合法の国の資料。
地球人口の約0.1%が売春をしているって、もしかすると職業人数としたらかなり上位なのではないか?
日本ではフェラ、素股、アナルは売春じゃないって本当におかしな話。
ただ見ない振りしているだけ。
無店舗型ばかり増やして、犯罪率を高めているだけに思える。
逆効果だとは思わないのか。
めんどくさいところだからか、その辺の法律には誰もタッチしない。
本の中塩さんの寄稿に「風俗の犯罪化が風俗嬢を危険に晒す」を読むとほんとわかるけれど、デリヘルとか結局危険な仕事と化しているのに、結局後回しなんだろうな。
無店舗型は一切廃止して、売春合法国を見習い、風俗を合法化してくれたら一体日本はどういう国になるのか。
そんなに変わらないか、何かがガラリと変わるのか。
私には想像もつかないけれど、少なくともフランスやオランダは行ったことあるけど治安もいいし、人も親切でいい国だった。
まぁ住んでいたわけではないし、風俗嬢じゃない時に観光だったから何も見えていなかったのかもしれないけれどね。
長くなったけれど・・・。
人の考えを否定も肯定もしない、共感も望んでない、ただこういう考えや価値観が世の中にはあるんだということを知ってほしいといううさぎさんのスタンスが、すごくおこがましいとは思うが自分のブログにも通ずるところがあって、読んでいて何度も共感してはとても気持ちが良かった。
理解を求めたり、誰かに媚びたり顔色を伺いながらの文章じゃないからより面白い。
なにせTwitterブロックされたり対談を断られた人の名前がまとめられていて、対談して登場していないのに、とにかくどストレートな言葉が面白過ぎた。
私自身も風俗嬢なのに、どこかで風俗業に偏見を持っていた。
いや、いまだに持っているから周りの家族や友人にも言えないでいるのかもしれないし、偏見を持っているであろう人にそんなことないよと考えを覆させられる自信もない。
風俗を引退したら、風俗嬢であった自分の記録は墓場まで持っていくと決めているし。
でも時が経ち、時代が少し変化したら、いつか偏見もなくなり合法化され、職業は風俗嬢ですと普通に言える日が来たら、私もそう名乗ってみたいものだな。
閉鎖的で狭い風俗業界、壮大なスケールというか様々な観点から読み解いていくと少し視野が広くなる気がする。
感想が長文になってしまったけれど、少しでも興味を持っていただけたら・・・ぜひ読んでみてください。
セックスワーカーに対する、うさぎさんの熱い思いに感動します!笑
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